デカルト・シャーマン

方々で「アッサリ退場しちゃった」「噛ませ犬」「イノベイター(笑)」と散々な評価をされていますが、小生は「対話を望む刹那と対比された、対話を拒むイノベイター」という見解に賛成しています。
アロウズの所属ということを耳に挟みましたが、そのことも「モルモット扱い」以上に「心も腐」らせていたのではないでしょうか。
冒頭の「戦争を美化しすぎ」というか「茶化しすぎ」な劇中劇での扱いからも解る通り、たった二年でアロウズは歴史の汚点、悪者扱い。実直な軍人であった彼が捻くれるのも無理はないかと思います。
彼を「実直な軍人」と判断することにも一応根拠といいますか思い当たることがあるのですよ。
二度目の出撃の際に「劣等種どもめ」とイノベイターとして覚醒していない人々を見下すような言葉がありましたが、これは彼の行動原理ではないと考えます。
本当に見下しているのならば、ガデラーザというとてつもない性能の機体を与えられたのを幸いに暴走してもおかしくありません。
しかし「鬱憤を晴らす」という以上の怨嗟は無く、他のパイロットにその戦果を誇示する様子もありません。
また、ELSに取り込まれた母艦を撃沈する際にも「これは味方殺しではない」と自らに言い聞かせている通り、デカルトの性分は「善」に近いものではないでしょうか。
彼は淡々と役目をこなし、それによって評価されることを目指していたのでしょう。しかも幸いなことに、ちゃんと評価して大尉待遇にしてくれるマネキン准将という上司も得ました。
デカルト・シャーマンという男は「目的の為には適切な手段を用いて着々とこれを達成する」タイプの人間です。
そんな彼にとってELSとは「叫んでばかり」で不愉快な存在だったに違いありません。
全てを受け止めようとする刹那と異なり、聞き流していた彼にはELSたちの「助けて」という意思は伝わっていたと思います。
それでもカタギリらに伝えることなく「それを考えるのは貴方がたの仕事」と突き放したのは「理解しようとせず聞くばかりの人々」と「叫ぶばかりで伝えようとしないELS」両方への苛立ちを抱いていたからではないでしょうか。
その苛立ちが「劣等種」という呟きに込められているように、小生には思われます。
「助けて」欲しいのは彼もまた同じだったのでしょうから。
あとほんの少しでも早く刹那が来ていれば、イノベイターの仲間と出会えることが出来たのならば……彼は救われていたのかもしれません。そして、救われて欲しい人物でもありました。
その意味では劇場版ダブルオーにおいて、最も悲劇的なキャラクターといえるでしょう。
 
蛇足ではありますが、そのデカルト・シャーマンというキャラクターにありありと命を吹き込んだ勝地涼氏の好演に喝采を送りたいと思います。